自分で歩けるようになった子どもは、興味の向くままに動き回り、ますますその活動が活発になります。自分の要望を簡単な単語でも話せるようにはなっていますが、気持ちの全部がことばにならない分、身体全体を使って自分のしたいことを主張するようになります。大人が心配するほどに、激しい動きを好んだり、わがままな自己主張をするのが、この時期の特徴です。

例えば赤ちゃんの頃は、大人に一見乱暴に振り回されたり、抱いて走ってもらったりすると「きゃっ・きゃっ」と嬉しそうに笑い声をあげて満足してくれていたものが、この時期にはことばで「もっと・もっと」とか「もっかい・もっかい」などといえるようになって、この楽しい遊びを何回でも要求するようになります。ついつい何回も応じて、大人のほうがくたくたになるということをどのご家庭も経験されていることでしょう。また公園のブランコ・滑り台・シーソー等、おじいちゃん・おばあちゃんではとても付き合えないような動きの激しい遊びも好むようになります。

実は、こうした動きを飽きもせずに繰り返し要求することは、子どもの切実な生理的欲求の一つの表れなのです。脳を激しくゆすられることによって、自分が動くだけでは得られない快感が得られるのだそうです。その快感を何度も経験することによって、子どもの脳の神経細胞が育ち、脳内の様々な細胞をつなぐ回線が張り巡らされていきます。脳内にスイッチが入り電流が流れていくといったら分り易いかもしれません。

2歳過ぎても、意味のあることばを一言も話さないお子さんに、上記の一見乱暴と思える遊びを、危険には充分に注意して積極的に取り入れることを進める指導方法もある位、子どもが声を立てて喜ぶ遊びには、生理的に大きな意味があるのですね。その他にも、大好きなもの・人・場所などをよく覚えられるようになり、日々のお買い物やお散歩でも、見たいものは必ず要求するこだわりの姿が強くなってきます。好きなものは何度も見て確かめ、楽しい遊びも繰り返し試したいのです。そうして子ども自身に、自分の身体の力の入れようや自分の好きなことをさせてくれる大好きな大人を信頼するという心が育っていくのでしょう。

この時期のあまりに多動で好きなものにだけ固執する姿に「発達上何か問題があるのでしょうか?」と心配されるお母さんも時々おられます。そうした方にお話を伺っていくと、「家の中では静かにさせたい、外に出かけたらよい子にしていて欲しい」といった大人側の尺度に合っていないだけで、お子さんの成長はすこぶる順調・健康的で活発なお子さんが多いようです。

元気一杯・体力の充分あるお子さんがどのような動きをしようと、危険さえなければ出来るだけスリルの多い動きを経験させてあげて欲しいと思います。この時期にしか獲得出来ない身体感覚を、是非育ててあげたいものです。しかしどんな時でもこの時期のお子さんは目を離したり、腕を引っ張ったりなどは厳禁です。そして自分で少しづつ、はねる・もぐる・飛び降りるなどの動きを経験させて、こども自身の身体の感覚を自分で感じ取れるよう見守ってあげたいですね。未熟ながらも自分でしたいということをさせてくれる大人を、子どもは心から信頼します。また、自分でやり始めたことで失敗やつまずきがあったときは、いつでも抱きとめて慰めてくれる大人が居ることによって、子供には「自分は認められている」という自尊心が確実に育ちます。こうして子どもたちのなかに、自分自身を大切にする「自尊感情」という、最も大切な心の基礎が育つことになります。

保育園でも「大切なお子さんをお預かりしている」といった緊張のあまり、「怪我をさせては大変」という考えが優先されてしまうことがあります。そうなると、子ども達が自由に走ったり高いところによじ登ろうとすることを、「あぶない・あぶない」といって禁止してしまいがちになってしまいますが、この時期こそ保護者の方々と充分な連携の下、お子さんの生理的な要求をいかに満たしてあげるかに知恵を絞って生きたいものと考えています。