間もなく2歳半になろうという年齢になると、子ども達は生活の全ての場面で大人の行動をよく理解できるようになってきます。生活の流れが分かってきているのですが、だからといって大人の思い通りに生活してくれる訳ではないのが、この年齢の特徴です。

生活の一つ一つに「大人と同じように自分もやってみたい!!」と思い、何にでも手を出して触ってみて、大人と同じ仕草を真似する場面も多く見られるようになります。

例えば食事の場面でも、大人の使っている箸にふと気付き、「じぶんもつかいたい!!」と言って箸を持ち、危なっかしくてはらはらするという経験をされたご家庭も少なくないでしょう。「箸なんて危ないでしょう!!」と言ってすぐに取り上げたくなりますが、箸を持って歩きまわらせないようにして、少しは自分で使わせてみても良いかもしれません。うまく使えないと食べられないということが分かれば、たちまちいつものスプーンやフォークに戻ります。何でもじぶんで体験することによって納得するのです。この時期に何でも「危ないの、だめだめ」と言って子どものやりたいことを拒んでいると、とても怒りっぽい子どもになってしまいます。この「大人の仕草を真似したい!!」という要求は、赤ちゃんの時に感じた「大人の使っている物をさわりたい!!」という欲求からさらに成長した証でもあるのです。

2歳を過ぎた子どもは、自分の存在以外に「他人」という存在があることに気付き始め、今まで世話をされることが当たり前だった自分から、世話をしてくれる人と自分の関係に気付きます。「世話をしてくれる人のようにやってみたい!!やれる!!」と思うのです。日常的な様々なお世話の一つ一つを「○○ちゃんも〜」といってじぶんでも実際にやってみたいと言い張ります。上記の箸の時のように、できる限りは子どものしたいようにやらせてみてください。やってみて子どもは身体感覚で理解できることがたくさんあるものです。何より自分の希望を聞いてもらえたといった満足が積み重なります。3歳近くまで子どもにとって、この様な細かいことを受け入れてもらって過ごす事と、「だめだめ」の連続で過ごす事には、大きな差が生じてくるものです。

保育園でも、3歳近い子どもが玄関先でものすごい声で怒って泣いていることがあります。ある時、大きな声に何事が起こったかと事務所から出てみると、靴箱からお母さんが靴を取り出してしまったと怒っているのです。そういったときの子どもは、決まって「じぶんで〜、じぶんで〜」と泣きながら叫んでいます。「じぶんで靴を出したかった」ということなのですが、おかあさんがこのことをあまり重要に考えていない場合は、事がとてもこじれてしまいます。泣いて怒っているお子さんをあまり理解できていないと、お子さんはますます怒っていきます。「クックちゃんをじぶんでとりたかったのね」といって「クックちゃん下駄箱に帰ろうね」といいながら、「下駄箱どこか教えてくれる?」と聞いていくと、ちょっと泣き止んできまり悪そうに自分の下駄箱の場所を教えてくれます。「クックちゃん戻ってうれしいうれしいって言っているね」などのお話をしているうちになんとなく機嫌が戻り、自分でそそくさと靴を取りに行き、自分で靴を履き、何とか機嫌が直っていきます。もちろん靴を履くにも、時間がかかります上手に靴が履けないときは、さりげなく後ろから手伝って自分ではけたという気持ちにさせてあげるということもこの時期のお子さんには必要なことかもしれません。とにかく、子どもの心の中に大きなプライドの芽が育ちつつあることを、私たち大人は気をつけなければいけないことなのです。

この時期の子どもは「自分で何でもやりたい」といった思いが強い割には、なかなかうまくはできないことがたくさんあります。「どうせ上手くできないでしょう」とか「時間ばかりかかって待っていられないでしょう」といったお母さん方の気持ちは本当によく解りますし、私自身の子育ての時期はやはり上手に対応してあげられなかったな〜と反省しきりではありますが、上記のお子さんのように泣き叫んで怒ってしまわぬよう、この様に大事になる前に、自分でやりたいという要望を細かく聞いてあげて欲しいと思います。子どもに「やりたい」ということをやらせてあげていくと、子どもの心の中に自己有能感(自分は何でもできるんだ〜といった気持ち)が育ち、小学校に入学する頃には「自分はみんなに受け入れられている」といった自尊感情が育って行きます。

そして自分を大事に思う心が育った子どもは、友達の良いところを認められる心が育ち、友達と共に競い合い・支えあう子ども集団に溶け込んでけるのです。

反対に、この時期に「何でもじぶんでやってみたい」という気持ちを受け容れられずにいると、自分に自信が持てない子どもに育ちます。小学校に行ってから学習や友だち関係に意欲的に取り組んで欲しいと願っても、手遅れにならぬ様、今のこの時期の子どもの可愛い意欲を大目に見て叶えてあげて欲しい思います。