楽しく子育て242526で書いてきた2歳児時代の特徴は、何と言ってもお世話をしてひたすらかわいがっていた赤ちゃん時代から一転したことです。子供自身の意志が芽生え、何をするにも自分の意志を主張し、なかなかお父さん・お母さんの思い通りにはいかなくなってきました。

朝の洋服の着替えに始まり、食事の食べ方、トイレトレーニング、お外に行きたくなればすぐさま出かけなければ大泣きをする。公園ではお友だちと遊具の取り合い、買い物に行けば「あれがほし〜ぃ!」とまたもやの大泣き。電車やバスも、乗った経験があるものは、思いつけばすぐにも「のりたぁ〜ぃ!」と大騒ぎ。

もちろん、お子さんの性格や日々の生活の仕方によって、お子さんの要求は様々ではありますが、生活のあらゆる場面で子ども自身の意志とこだわりが顕著になってきます。というのも、家庭生活の中で、子ども自身ができることはなるべく子どもにさせてあげているうちに、子どもの「自分でやってみたい!」という自発性が育ってきたからです。

育ち始めた自発性は、「自分は何でもできる!」という自己有能感へと発展しますが、その気持ちを家庭から一歩外に出たところで試してみたくなってきます。これが、この年齢特有の「ジコチュウ娘・息子」の大きな原因です。

とても良く見かける例は、3才前らしい子どもが、エレベーターのボタンを押したがる風景です。ある休日買い物に出かけた日のこと、荷物が重くてエレベーターに乗り込みました。私の後から元気の良い二人の兄弟が駆け込むように乗り込んできました。二人はすぐにボタンを押そうとしましたが、すぐに「だめだよ〜」という声と共に二人のお父さんが乗ってきました。5歳は過ぎているような、体の大きなお兄ちゃんはすぐに手を引っ込めていましたが、お父さんの操作でドアーがしまろうとしても、あどけなさの残る3歳前らしい男の子は、納得行かない様子でボタンをあちこちいじっていました。お父さんは小さな男の子から離れたところで「こら〜ぁ、いたずらしちゃ〜だめだよ」と、ちょっと怖い声で叱っていました。あまり効き目がなくその子がいじり続けたので、結局お父さんに手を取られてしまいました。男の子はとても恨めしそうにしていましが、大きな声で泣くこともありませんでした。

またあるときは、やはりかなりの速さで駆け込んできた3歳前らしい男の子がボタンを触ろうとすると、お母さんが「ここ、“開く”を押していてね、他の人が乗ってくるでしょう」と、男の子に正しい押し方を教えていました。男の子は入り口から入ってくる人たちを見ながら、とても得意そうにボタンを押していました。乗り込む人が終わるとお母さんは「はいではこっち」といいながら、“閉じる”のボタンを示してちゃんと男の子が“閉じる”を押すのを見守っていました。男の子もドアーの具合をちゃんと見ていて、一仕事が終わったような満足そうな表情でした。

エレベーターのボタン一つでドアーが開いたり閉まったりするというのは、3歳前の子供たちにしてみたら、なんとしても自分で試してみたいことに違いありません。ともすれば事故につながりかねない大人社会の道具をどの様に触らせるかは各ご家庭によって考え方もそれぞれでしょう。最初のケースのお父さんのように「いたずら」と捉えてその場を一喝する方法は、子どもの好奇心を摘んでしまいかねません。二つ目のケースのお母さんのように、面倒でも子どもの目線に付き合い、大人としては公共の乗り物としてのルールまで伝えられれば、子供にとっては大きな学習の場にもなるのではないでしょうか。他人の目を気にせず堂々とボタンを押させているお母さんの勇気には周囲の人達もなんとも微笑ましく見えたに違いありません。

この他にも、この時期のお子さんとの良くあるトラブルの一つで、洋服のコーディネートに関するものがあります。そろそろオムツもとれ、髪の毛も生えそろってきて、男の子も女の子も実に可愛らしくなってきます。育児の喜びの一つでもある、おしゃれのさせ甲斐が出てくる時期でもあります。しかし困ったことに、この時期の子どもは何といっても、その時々の自分の「思い」が強くあるので、突然のようにお母さんの決めた洋服を着たがらず、とんでもない組み合わせの洋服を取り出して「これを着る〜」と言い張ります。お母さん自身がコーディネートに大変こだわっておられる方は、お子さんの選んだ洋服がどうしても許せないようで、「毎朝大騒ぎでたいへん」とおっしゃる方もいます。他方あまり頓着のないお母さんは、お子さんの選んだ季節はずれのズボンをはかせてきて、「どうしても穿くってきかないので」と笑っています。お子さんの意志を尊重するなら、とんでもない組み合わせの洋服になっても、ちゃんと外に連れ出す勇気が必要になってくるかもしれません。

頑固な自己主張やこだわりが現れるこの時期は、大人にとってはとても大変な時期であり、「魔の二歳児」と俗にいわれる所以です。しかし子供の心の発達から見るなら、「自分でやれる」という気持ちを様々な形で試し、自分の力への信頼(=自信)を積み重ねている事の現れなのです。「三つ子の魂百までも」といわれるように、自己信頼感や自己有能感の形成は、その子の一生に影響する大切なプロセスですが、この時期の大人の対応方法でそれを助けることも阻むこともあることが分かります。大人が責任を持ち、一応は子どもの主張につき合ってあげつつ、その代わりに注意事項や社会のルールを丁寧に子どもに話してあげて欲しいと思います。また子ども自身が選べるように「こっちとそっちのどちらが良いの?」など、様々な工夫と知恵を働かせて方法を示せば、子供の自発性や意志を削ぐ事無く、社会のルールとの折り合いの付け方を教えてあげることができるでしょう。子ども自身に考える力が育ってきたことを喜びながら、この何とも厄介な“ジコチュウ娘・息子”ちゃんと楽しく付き合って欲しいと思います