3歳が近づいてくると、下の子どもが生まれてお兄ちゃん・お姉ちゃんになるお子さんが多く居ることでしょう。兄弟・姉妹ができると、ご家庭では“兄弟げんか”といった新たな課題で頭を悩まされます。また、年下の子どもと過ごした3歳前の幼児に、「赤ちゃんがえり」の現象が起こる事があります。大人にとっては、これまでにない新しい難問が起こる時期です。

まず兄弟・姉妹のけんかですが、10歳近く年が離れた兄弟・姉妹でもけんかするそうですから、けんかするのはあたりまえと考えていた方が良いようです。そしてけんかをすれば必ず“なかなおり”をしなければならず、むしろそのプロセスこそが大切です。兄弟・姉妹のいるお子さんは、けんかをした後の“なかなおり”の仕方が上手になることからも、人間関係の訓練として必要不可欠なことと思えます。

家庭内や保育園での子供同士のけんかについて私達大人が気をつけなくてはいけないことは、どちらかを悪者にする考え方です。私達の保育園では「けんかはしてはいけないもの」という考え方ではなく、けんかをしたときに「顔や体の大切なところを傷つけるのはいけない」と教えるようにしています。実際には言葉の出ない3歳位まではひっかく・かみつく等相手を傷つけてしまうことが多いのですが、必ずその度に本人がどうしたかったかを聞き出し、「〇〇と言おうね」と言葉を添えるようにしています。そして何より気をつけていることは、かみつき・ひっかきなどが続くお子さんの心の状態がどのようになっているかを考えることです。「そのお子さんの心に何か大きなストレスはないか?」と考えてあげると、案外なぞは解けるのです。

例えば一人っ子のお子さんでも、この時期に何かと生活上のストレスが起こってくることがあります。歩行を開始して以来、お父さんお母さんに抱かれることが少なくなり、もしかしたら「○○しなさい〜」といった命令の言葉が俄然多くなっていないでしょうか?お子さんが何となくいらいらすることもあるでしょう。

また一番大きな、分かりやすい理由に、下にお子さんができてお母さんの手がとられてしまうといったケースがあります。お母さんにしてみれば、何かにつけて「いや〜、じぶんで〜」とあまり上手にはできないことでもやりたがる厄介なお兄ちゃん・お姉ちゃんに比べて、赤ちゃんの方を可愛く感じてしまいがちです。世話をする時間も圧倒的に長く、多分お母さんが赤ちゃんをあやす何とも優しい横顔を見て、「おかあさんはあかちゃんのほうがすきなのだ、じぶんはだいじにされていない」と不安・ストレスがたまり始めるのでしょう。保育園に通っている子どもであれば接触の多いお友達に対していらいらするし、ご家庭で過ごしているお子さんはお母さんや赤ちゃんに対して、また公園や近所のお友達に対して、楽しい関係がつくりにくくなります。

この難しい状況を楽しく乗り切るためには、赤ちゃんのお世話を最小限にして、出来るだけ上の子のペースを大切に考えてあげることです。気にかかって仕方のない赤ちゃんのことを、上の子の目線で話してあげると、その子の心は安定してきます。たとえば3歳前のお兄ちゃん、お姉ちゃんは、何でもお世話をしたがり危なっかしく、赤ちゃんと同じ哺乳瓶でミルクを飲みたい等と言います。そのとき、「お兄ちゃんのくせにおかしい・おねえちゃんなのに恥ずかしい」等と否定的なことを言わずに、是非言う通りに飲ませてあげてください。子どもにとって、「おかあさんはじぶんのことを、あかちゃんとおなじようにしてくれた」という安心感が生まれ、ずっと落ち着いてくれます。

3歳前のこの時期のお子さんを連れて、お友達の家に遊びに行かれたお母さんのお話があります。お友達の家には半年ぐらいの赤ちゃんがいて、お母さんは久しぶりに赤ちゃんを見て、とても可愛いと思ったそうです。そして自分の子どもがいたずらばかりする困った子どもに思えたそうです。家に帰って翌日ぐらいから、そのお子さんは寝転んで「うまうま」と赤ちゃんのような声を出すようになって、そのお母さんはびっくりして、保育園に相談に来ました。そのお子さんは赤ちゃんになればお母さんがとても優しい声を出してくれると気づいたのだと思い、「赤ちゃんがえりと言うのですよ」と話すと、そのお母さんはとてもびっくりしていました。お子さんがそのように自分のことを見ているという事、子供が赤ちゃんのように可愛がって貰いたいと思っている事を知ると、「子どもの感受性って、私が考えている以上にデリケートなのですね」と話しておられました.

自分のストレスをストレートに表現できるという意味で、赤ちゃんがえりの方法を見つけられたお子さんはとてもラッキーだと思います。大人側は、けんかやいたずらとして現れるストレスのサインを見逃さず、それをきっかけに人間的に成長できるように配慮してあげることが、大切だと思います。また親自身にとっても、3歳前の子どもと付き合う事は、簡単なことではありません。実のお子さんであっても、気性や感性は全然似ていないこともありますし、時には苦手な相性というものもあって当然だと思います。このことを母親一人で抱え込まず、できたらお父さんや親戚の人、保育園などを是非頼ってください。特に保育園のようにたくさんの大人がいる所では、思いがけずに気性の合う職員と出会うものです。そうした関係からお子さんの可愛らしい面が開発され、お母さんとの関係がとても良くなったというケースもあります。子育てにはやはり多くの人間関係が必要です。人に頼る事も簡単ではありませんが、保育園を含めて「頼れる保育仲間」を増やすよう努める事も、親として成長するきっかけとなるはずです。