3歳を過ぎると、子どもたちの個性はますますはっきりとしてきます。この年齢になると、すでに保育園に入園している・いよいよ幼稚園の年少クラスに入園する・そして地域の子育てサークルなどでお友達と遊んでいるなど、子ども自身の体験が大きく広がることも関係しているでしょう。さらに兄弟・姉妹関係の有無によっても、言葉の発達などに個々の子どもの違いが現れます。個性がはっきりしてきた三歳過ぎの子どもたちには、他の子どもたちとの世界が開けますが、子ども同士のトラブルも増えるので、子育てをする大人にとっては、新たな難しさが生じる時期です。

保育園でお兄さん・お姉さんのいるお子さんが達者にことばを駆使してけんかをしている姿はよく見かけることです。けれど、それまでご家庭で過ごしていたお子さんが幼稚園に通い始めて「急に悪い言葉を使い出して困った」と嘆かれるお母さんが少なくありません。幼稚園にもお兄さん・お姉さんの真似をして得意そうに乱暴なことばを使っているお友達がいるのでしょう。そんなとき、頭ごなしに叱らないで欲しいと思います。この時期の子どもには、恥ずかしさの感情が育ち始めていて、大人が思う以上に子どもの心は傷つきます。大人の方が何もなかったように無反応でいると、いつの間にか悪い言葉も使わなくなるものです。また、目くじらを立てて「あの子は乱暴な言葉を使うから遊んではいけません」などと、お友達を悪く言うこともしないで欲しいと思います。一過的な事ですから、おおらかに見守ってください。

年上の子から覚えた乱暴な言葉を達者に使う子がいる一方で、まだまだ発音もはっきりせず、お母さんの通訳が必要な子どももいます。発音がはっきりしない子どもの場合も、子どもの気持ちを傷つけない言い方で周囲の大人が正しく言い直してあげる事が必要です。この時期の子どもの言い間違えは実に可愛らしく何度も言わせたくなるものですが、間違った言い方はさり気なく正しく言い替えてあげないと、お子さん自身正しい言葉を覚えるチャンスを逸してしまいます。そうなると、もう少し大きくなったときに、本人がお友達に伝わりにくいと感じて、家以外言葉を発さなくなってしまい、お友だちとの関係が結びにくくなってしまうこともあります。

いずれにせよ、この年齢の子どもたちの言葉の獲得には、まだまだ私達大人の配慮が必要です。子どもの心を育てるような言葉の育ちを配慮して付き合って欲しいと思います。3歳を過ぎるとそれぞれの子どもの特徴が目立ち、「うちの子は○ちゃんと比べて遅れているのではないか?」と心配されるお父さん・お母さんがいますが、子どもの個人差・個性の違いをひとつひとつ発達の遅れといった見方で話さないことが大切です。子ども自身も、大人たちのそうしたことばを聞き、自分とお友だちの違いをマイナスとして受け止めてしまうからです。

言葉ばかりでなく「こころ」の発達についても、この時期の子どもは大人を戸惑わせます。ある日突然、毎日通っていた場所(保育園・幼稚園・公園など)に「いきたくない〜、ママがいい〜」と大泣きすることがあります。びっくりしたお父さん・お母さんは「保育園・幼稚園で何かあったのかしら?公園のあの子がきっと嫌なのね」等と、目に見えるものに原因を見つけようとします。けれどこれはむしろ、子どもの想像力が育って来たため、親と離れた場面を想像して不安感が生じた結果です。この時期のお友だちとの遊びは、想像力を働かせとてもユニークな展開を見せるようになったり、一人で遊びにも没頭できるようになるので、子どもが親と離れることが多くなります。同時に、「離れてしまったらどうなる?」ということを想像できるようにもなるので、不安にかられると突然に「ママがいい〜、ママじゃなきゃだめ〜」と泣き出したりします。このような時はあまり無理をせずに、外遊びなどは休みましょう。保育園や幼稚園に通っている場合は担任の先生にお子さんの状態をきちんと説明し、しっかり抱きとってもらうことです。自分のことをしっかり抱きしめてくれる大人がいるという事を知ると、泣いて母親から離れることを不安がっていたこともいつの間にかけろっと忘れ、また一段と成長した姿を見せます。

私達は3歳前後の「分離不安」を、「大きく成長する前の通過儀礼のようなもの」と考えています。子どもの心に今までよりずっと大きな世界が見えてきた心の成長の現われと考えれば、むしろ喜ぶべきことなのです。ついこの間まで「じぶんで〜じぶんで〜」と何でも自分でやりたがり、欲しいものはとことん欲しがり自己中心的だった子どもが、いつの間に生活の中での秩序に気づき始め、自分の思い通りにいかないこともがたくさんあるということに気づき始めるのが、この時期です。何かに強くこだわったかと思うと、突然のように赤ちゃんがえりの症状を見せるのですから、親たちににとっては、まだまだ苦労が多いですね。

3歳児の前半は、自立と甘えを繰り返し螺旋階段を上るように成長していくというのが大きな特徴です。またこの時期、家庭だけでは体験できないお友達との葛藤を多く経験します。会えばけんかばかりしても翌日にはまたけろっとして遊び出す、子どもにとってのけんかは根にもつことは決してありません。良く見ていると仲の良い子同士ほどけんかをするのです。こうした心の葛藤をたくさん経験していくうちに、子どもはけんかをしないで遊ぶ方法(協調性)を考え、社会性の芽が育ち始めます。将来社会の中で、たくさんの人々と関っていくだろう人間力の基礎が育つことを考え、この時期に特有のお友達とのトラブル、お子さん自身の極端な甘えなどを鬱陶しがらずに、心広く暖かく受け止めてあげて下さいね。