赤ちゃんが迎える、生まれてはじめてのお誕生日。お父さん・お母さんをはじめ、親戚の人たちは大きな喜びでその日を迎えることでしょう。1歳を迎える前からもう歩き始めたお子さん等は、赤ちゃんという言い方も似つかわしくなくなり、一人の立派な子どもとしてのスタートの時期のようにも感じられます。産まれてはじめての誕生日を目安に、「一人歩きが出来るようになっていた」「母乳をやめていた」等とお子さんの成長を記憶しているお母さん方が多いように、満1歳のお誕生日は赤ちゃん自身が大きな成長の節目を迎える時でもあります。

しかし、歩行の開始・離乳食完了・母乳を切り上げる断乳等は、大きな個人差があります。たとえ、赤ちゃんを取り巻く大人たちにとっては大変感動的な節目ではあっても、全ての赤ちゃんが1歳の誕生日を境に教科書通りに成長するものでもありません。赤ちゃんが100人いれば100人分の成長のパターンがありますから、「大体の赤ちゃんがお誕生日を迎える頃には歩き始める」といった世間的な目安には、惑わされないことです。前回の「楽しく子育て」でも書きましたが、歩行開始は赤ちゃんにより10ヶ月~1歳半といった大きな開き(個人差)があり、歩行開始の遅いお子さんが将来、運動が苦手になるといったことは全くありません。はいはいをたくさんして、なかなか歩き始めなかったお子さんが幼児期に転び上手になる事も、保育園では実証済みの事です。

歩行開始の他にも「離乳食が完成した(母乳の卒乳・断乳)」、「言葉を話し始めるようになった」、「トイレトレーニングを開始した」等、知り合いのお子さんの成長ぶりが耳に入って来ると、お母さん自身が自分のお子さんと比較してしまい、焦りを感じてしまうのも満1歳の誕生日を過ぎる頃からでしょうか? 子どもの成長は一人ひとりのお子さんのペースで進みます。そのお子さんのペースをじっと見守り大切にしてあげる事が何より大切なことだと思います。

ただこの時期に、お母さん自身がどうしても決断を下さなければならない事が、「断乳」のタイミングではないかと思います。この時期までに、どう頑張っても母乳が出なくなって自然にミルクに切り替わってしまっている、いわゆる卒乳してしまっている場合は何の心配もないのですが、母乳はまだまだたっぷり出ているけれど、例えば職場に復帰したいとか、離乳食をたっぷり食べさせたい、などの理由で「1歳になるのでそろそろ断乳したい」という方は、「断乳するか?しないか?」で随分と悩まれています。母乳は赤ちゃんがぐずったりすると実に便利なもので、何かでぐずり出した2歳近いお子さんに、さっさと母乳を含ませてしまうお母さんを電車の中で見かけた事がありましたが、このような“口封じ作戦”はどうも感心しません。また母乳を与えている事でお母さん自身が非常に疲れているような場合は、きっぱりと断乳する事をお勧めしていますが、母乳が出ているのに止めるという事に抵抗を示すお母さんは、意外と多い事も確かです。母乳で全部育てたいといった母乳神話が、お母さん方を縛っているのかもしれませんが、何かにつけて母乳を含ませてしまい、お子さんに語りかける事が少なくなってしまう母乳依存型にならぬよう、ご自身の体調と相談しながら断乳を決心して下さい。止めると決まったら、お子さんに前もって伝え(良く話すと分かります)、大きくなったお楽しみ(「今迄食べられなかったケーキやアイスクリームが食べられるね!!」など)を話してあげて下さい。断乳当日は悲しそうに泣いても、どうかお母さんの決心が揺らがぬように! ただし、とても母乳の出が良い方は、乳腺炎にならぬよう、専門医の指導のもと進めて下さい。この事もお母さんの体質によってだいぶタイプが異なります。ご自身の納得のいく断乳の方法を見つけて下さいね。

さて、断乳についての動機の一つに“職場に復帰したい”という事柄を挙げました。お子さんが満1歳になると「そろそろ」と考えられる事の中に、「保育施設に預ける」という事があるでしょう。この4月より実際に新しい生活を準備されておられる方も多い事と思います。

私たちの保育園でも、4月からの入園に備え、お母さんと赤ちゃんの面談が始まっています。先日10ヶ月になる実に愛らしい女児の面接がありました。ママに似たその愛らしい女児について、時々私の口から女児の名前が発せられると、その赤ちゃんは私のほうを振り返ります。その度に「まあ~可愛い~!」と笑いながら面談を進めました。最後に「だっこさせてもらえるかな~」と手を出しましたらお母さんが「人見知りの時期で~泣きますよ」とおっしゃったのですが、全然泣かずに抱かれてくれました。もちろん私のことを、はじめはしげしげと見ていましたが、私が「可愛い~」と何度か言ったことを、ちゃんと聞いていたのでしょう。赤ちゃんは何もしゃべりませんが、大人同士の会話を理解しているのだという事を改めて実感し、とても嬉しくなりました。その前提には保護者の方々の保育園を信頼してくださるお気持ちがあり、それがお子さんに伝わった事は言うまでもありません。

保育園に限らず、子供が多くの人を信頼できるようになるためには、大人同士が偽りの無い信頼関係を築くことが何よりも大切です。保護者の方々が安心して頂けてくださるよう、預かる側の私たちは大いに努力をしていかねばなりません。その一方で、保育園にお子さんを預ける事が決まっているご家庭では、どうかお子さんの前で、その施設に関する不満などをお話にならぬよう気をつけて下さい。もちろん大人だって人間ですから、しばらく新しい環境に慣れなかったり不満があったりしても当然です。でもそんな時は、ご不満・疑問などは、必ず保育園側にしっかり伝える事を忘れずに。不満や疑問を持ったまま晴れぬ気持ちでお子さんを預ける事は、お子さんが保育園に慣れていかれない大きな理由になってしまいます。大切なのは、誠実にコミュニケーションを重ねる事で、預かる側も預ける側も互いに努力して、子供が安らげる信頼関係や環境をじっくり築いていくことなのだと思います。

最初の節目となる1歳の誕生日前後は、赤ちゃん自身の目に見える変化や、様々な環境・生活上の変化が起こる時期でもあります。赤ちゃんのペース、お母さん自身のペースをともに大切にしながら、赤ちゃんを見守り愛する大人たちの輪を、楽しんで広げていって欲しいと思います。