私たちの保育園では、赤ちゃんが満1歳の誕生を迎えるちょうどその日に、ささやかなお誕生会を開きます。たまたま保育園のお隣に、季節の花を次々咲かせ譲ってくださる方が居るので、誕生児にはほんの1〜2輪を「ハッピーバースディ〜」の歌と共に贈ります。年度の初めは、満1歳のお誕生児以外は皆小さい赤ちゃんなので、お誕生日の意味も分らず、ただただお花に目を凝らしているばかりです。

しかし、さすが満1歳を迎えた当の本人は、準備された椅子にちゃんと座り「僕はお祝いされているのだ」といった得意そうな表情を見せるからびっくりです。ほんの少し前には私に人見知りをして火がついたように泣いていたのに、お祝いの花を持っていくと、担当の保育士さんが「お花頂いて良かったね〜、うれしいね〜」と笑顔で言ってくれることもあって、人見知りもせずに私を受け容れてくれるようになります。そしてもっとびっくりすることは、その誕生日以来、私が用事で赤ちゃんの部屋に入って行くと、人見知りをしていたときとは全く違う、「このひと、しっている」といった表情をみせてくれることです。(勿論、担当の保育士さんが私のことを歓迎してくれる言葉あってのことですが・・・)お誕生日を迎える満1歳は、はいはいの子もいれば、伝い歩き・ヨチヨチ歩きの子もいて、一人ひとり全くといって良いほど違った発達と個性を見せているということは、前回の“楽しく子育て⑫”でも書きました。けれどこのお誕生会を経験すると、その嬉しさを覚えていて、その後の人間関係に大きな成長を見せることに関しては、どの子どもにも共通しているように思えます。

満1歳を越えると、赤ちゃんはお父さんお母さん以外の人にも大きな関心を示し始めます。電車の中でも、ベビーカーに乗せられた1歳を過ぎた位の赤ちゃんの目を見つめ、少し笑いかけると、どの赤ちゃんも関心を示して、そして必ずお母さんの顔を見上げます。「このひと、だあれ?わたしにわらっているけど・・・」と一寸不安そうに見えたり、ちょっと喜んでいる風に見えたり、赤ちゃんの性格によって様々です。そしてその場面でのお母さんたちの様子も様々。最近は大半のお母さんは携帯のメールをみているかメールを打っていて、赤ちゃんがお母さんを見上げたことにも殆ど気がついてくれません。

ところがある時、電車の入り口に並ぶように居合わせたベビーカーの赤ちゃんに目が合い、いつものように笑いかけてみると、赤ちゃんはちょっと面白そうな顔をして急いでお母さんを見上げました。私とのやり取りを見ていたお母さんは小さく頷くように笑って返してくれました。赤ちゃんは両手をばたばたと動かし、喜びの表情と共に「きゃっ、きゃっ」笑ってくれました。その可愛らしさに、横にいた女性も「可愛いわね〜」と思わず私と顔を見合わせ、赤ちゃんを囲んで幸せな一時が流れました。この様な場面(赤ちゃん連れのお母さんに近づくこと)は、最近の東京では大変稀になってきていますが、地方に出かけると中年女性が赤ちゃん連れのお母さんと案外親しく話されている場面を見かけます。赤ちゃんを見たら可愛くて思わず声をかけたくなる周囲の大人が居ることや、お出かけ中何を見ても興味津々の赤ちゃんがお母さんを見上げることの意味を少しだけ解ってあげて、赤ちゃんと目を合わせる場面をもっと多くして欲しいな、といつも思ってしまいます。

好奇心が爆発的に育つこの時期に、いろいろな場面で赤ちゃんがお母さんの顔を見あげるのは、「おもしろそうだな〜、でもちょっとこわいかな?」と、好奇心と同時に恐怖心も育っているからなのです。赤ちゃんにとって、未知なる物や人を知りたがる好奇心は、自分を守って保護してくれる大人たちの言動を通して育てられるので、赤ちゃんのほうからお母さんの顔を見上げた時には、非常に危険なもの意外は、「面白そうだね〜」と、にっこり笑顔で赤ちゃんの好奇心を認めて、安心させてあげて下さい。こうして後押しされた赤ちゃんの好奇心は、将来何事にも恐れずにチャレンジする、自主性として育っていくことができます。そして未知のものや人との触れ合いが楽しいという事を見せるために、是非大人同士のコミュニケーションを積極的に楽しんでほしいと思います。昔のように、スーパーでの買い物はほとんど一言もしゃべることがありませんし、買い物に行ってお店の人に声をかけてもらえる環境も少なくなりました。お母さんが誰かと楽しそうに話している場面を赤ちゃんが見る機会は、少な過ぎるのです。赤ちゃんと一緒にいるときの大人の言動こそが、赤ちゃんの好奇心をのばす鍵だと心得て、お出かけや新たな出会いを楽しんでみて下さい。赤ちゃんのおかげで、見慣れた風景も新しく見え、予想外の出会いが生まれるに違いありません。