しばらく振りに会う4歳の子どもは体重に比べ背丈がぐんと伸びて、痩せたように感じられます。この時期、体形が乳児の姿から幼児のそれへと変わっています。脚力がついた子ども達の動きは活発になり、足の速い子どもが本気で走って行くと、追いかけるのが大変です。

 乳児から幼児に脱皮するこの時期、体の発達ばかりでなく、心も大きく発達をとげますが、心の発達のひとつとして、「自分を客観的にみる力」が育ってきます。例えば、子どもにとって自分の誕生日は特別に嬉しいことですが、意識的に「もうすぐ私の誕生日!」とか「この間ぼくの誕生日だった」と報告してくる子どもは、4歳の誕生を迎えた子どもにとても多いのです。4歳を迎えた子どもの大半は「ぼくはもうお兄ちゃんだよ」とか「私はお姉ちゃんになったの」という言葉を加えます。「あら赤ちゃんが生まれたの?」と知らなかったように聞いてみると、「そのお兄ちゃんじゃあないの」ときっぱり否定するところは、本当に驚きます。

 4歳を迎えて子どもたちは自分が大きくなったことを、内面的な成長として意識し始めています。家庭内でも、少し前の訳の分らない駄々のこね方が随分と減ってきて、お父さんお母さんが「4歳になってお兄ちゃんになったわね、聞きわけが良くなって本当にお姉ちゃんになった」などを言葉にされていることでしょうから、それもあって、子ども自身上記のような言葉が出て来るのかもしれません。

 とはいえ、4歳頃の、言葉・感情・社会性などの様々な面での発達は、それぞれの環境によって、大きく個人差があります。『家庭内に兄弟がいるか?』『同居の祖父母がいるか?』『集団生活をしているか?』『近所に家庭を行き来できるお友だちがいるか?』など、4歳になるまでの子どもを取り巻く環境の大きな違いが、個人差として目立つ時期になって来るともいえます。くれぐれもご自分のお子さんを、発達の早いお子さんと比較して否定しないようにしていただきたいと思います。

 「自己中心期」と呼ばれる、自分自身を中心に世の中が回る3歳代を過ぎ、段々と自分のことを客観的にとらえる思考が育ち始める4歳過ぎの子どもは、「自分より大きいお兄さん・お姉さんには力ではかなわないな」ということが分ってきます。反対に自分より下の子どもには何となく優位に立った感覚を持ち、特に赤ちゃんの存在は特別に「かわいい」と思えるのか、優しく接することが出来るようになります。そんな4歳代の子どもの気持ちは、とても複雑です。片方では自分より大きなお友達の存在、自分にはない個性に気付き、意識し始めるからです。特に集団生活をしているお子さんにとっては集団でのストレスはとても大きなものがあります。

 しかしこの時期に下に弟や妹が生まれると、どうしても「お兄さんでしょう」とか「お姉さんのくせに」などと、お子さん自身の気持ちを分ってあげられない場面が出てきます。赤ちゃんの存在には「かわいい」という気持ちは充分に持てるものの、何かと「お兄さん・お姉さんらしさ」を強要されることは、子どもにとっては辛いことです。たちまち「赤ちゃんがえり」をして、少し前にしていた訳の分からない駄々をこねて、お父さん・お母さんを困らせます。お母さんに抱かれ優しくあやされている赤ちゃんと同じようにお母さんに存分に甘えたいのかもしれません。

 このような要求を「お兄ちゃんのくせに恥ずかしい!」などと、甘えたい気持ちを否定してしまったらどうでしょう?。自信がくじかれ、無力感が募ってしまいます。この年齢の子どもは、子ども同士の個人差について、自分自身が他人と接触する中で強く感じています。大きいお兄さん・お姉さんのすることを憧れの眼差しで見るばかりでなく、私は彼らの表情から、「自分には出来ない、悔しい!」とか「出来ないことは恥ずかしい!」といった表情を読み取ります。自分より大きい存在に気づくことにより、自分の足りなさ加減にも気がつくのでしょう。だとすれば、家に帰ったら自分も赤ちゃんのように甘えたくなるのは当然です。あるいは、兄弟はいなくても、日々成長を願う大人達の期待が大き過ぎる場合、子どもはその期待に添うために、自分の出来ないことに触れたくなくなり、日常のちょっとした失敗を恥じたりするようになります。

 この時期の子どもたちの個人差は大きく、まだまだゆっくり成長している子どももいるので、発達の早いお友達を基準に、自分のお子さんを見ないことです。また、この時期に芽生える自己意識や「恥」の感覚を上書きしたり、プライドを傷つけないように気をつけてあげて欲しいと思います。

 4歳代は子どもの心の中に相反する複雑な感情が葛藤する時期ですから、私達はその心の動きを干渉し過ぎず、子どもが要求してくる事を全面的に受け止めてあげられる大人でいたいものです。とはいえ、子どもの心のあるがままに受け容れてあげることは、案外難しいものです。日頃子どもが感じる生理的感覚「あつい」「さむい」「いたい」「かゆい」などを丁寧に聞いてあげながら、子ども自身が自分の気持ちを言葉にできる習慣を作っておくことで、子どもが自分の心の動きについて否定的に考えないように見守りたいものですね。