いよいよ保育園を卒園し、小学校入学の時期に向けて、各家庭で準備しておかなくてならないことについて書かれた本があります。「わが子が小学校に通うとき読む本」担任が教えてくれない生活術( 三浦真津美 PHP)。この本が発行されたのは18年前のことで、小学校の様子がだいぶ変ってはいるものの、要約すると入学前の子どもに必要なことは、生活習慣の自立とコミュニケーション能力と述べられています。学習に関しては事前に準備することは担任の先生と母親の見解はだいぶ違っているとも述べられていて、先生方はほとんど「ひらがなの読み書きはすぐに覚えるので、是非生活面での自立を!」といった意見が多いようです。もちろん私も同じ考えで、小学校入学までには是非とも自分のことは自分でできる子どもであって欲しいと思っています。

 それ以外に、小学校入学に関して、家庭内の問題として是非とも準備しておいて欲しいことについて考えたいと思います。それは、大人目線で子どもに与える学習準備ではなく、生活様式の変化に伴って大人こそが準備しなくてはならない心づもりに関するものです。

 保育園が長時間保育を行うようになり、私たちの法人では夕食付で夕刻8時15分迄の保育を行い、その利用家庭が年々増加しています。「保育園で預かってもらえて本当に安心」といった声は多く聞かれ、保育園が各ご家庭にお役に立っていることは嬉しい限りではありますが、小学校に入学すれば利用できない施設です。保育園に通うお子さんの大部分は学童クラブに入所しますが、運悪くクラブに入れなかったお子さんの場合、小学校入学と同時にお母さんが退職されたりと、保育園から学童保育施設へスムースに移行できていない例も多い現状は、残念に思えて仕方ありません。また学童に通う通わないに限らず、お母さんたちが「他人に迷惑をかけたくないから」とお子さんに鍵を持たせ、子どもに留守番をさせて何とか様々な用足しをこなしている家庭が実は大変多いのです。

 保育園や学童クラブのように、手続きをとり利用料を滞りなく支払って一消費者としてのルールを守って得られる保育サービスには、確かに人間関係の煩わしさは伴わないかもしれません。仕事と子育ての両立をそのご家庭のペースで完璧にこなそうとすると、親戚・近所・子どもの友達の家族との付き合いは煩わしく思えてくるかもしれません。しかし子どもの立場で考えるなら、それまで幼稚園・保育園でたくさんの友だちに囲まれて楽しく安心に過ごしていたのに、突然一人での留守番は子どもにとっての負担は大きすぎます。

 日々の遊びの中で大好きなお友だち、気の合うお友だちができて、幼稚園や保育園を卒園する頃には一日中でも特定のお友だちと遊び続けたいと思うようになります。そして「お友だちともっと遊びたい」といった欲求から「お友だちの家に遊びにいく」「お友だちを家によびたい」と、さっさと約束をしてしまうお子さんがいます。「あらあら今度からお母さんに聞いてからにしてね」と言いつつ、気さくにお友だちのお母さんに子どもを託せる方もいれば、「よそのお宅に迷惑をかけるから」と決して遊びに行くことを許さない方もおられます。お友だちを預けると自分の家でも預からなくてはならないので、「絶対にダメ!!」と許されないお子さんを見ていると本当に貴重な体験の機会を失ったな、と心から残念な気持ちになります。

 楽しく子育て38 お友だちを家に招こうで書きましたが、子育てを楽しくするコツは、とにかく子どものお友だちを沢山家に招くことだと思うのです。お友だちを預かってみると同じクラスのお友だちでも随分と成長や性格が違うもので大変勉強になり、特に一人っ子のご家庭は是非とも我が子がお友だちと遊ぶ姿を見て頂きたいと思います。何しろ子どもは無邪気なもので、「○○くんのママ~」と我が子とはまた違った甘え方をしてくれるのでお友だちの成長に付き合うことは本当に幸せなことですし、こんなことから育児の楽しさは開かれていくものです。

 預かる側がそのように幸せな事なのですから、預けることによって「相手に迷惑をかける」なんてとんでもありません。子どもを預かってもらって感謝し「ありがとう」と親が頭を下げる姿を見せ、「楽しかった?」とお友だちの家で過ごした時間を一緒に喜んであげられれば、子どもにスケールの大きい世界観が育ちます。もし何らかの迷惑をかけてしまったとしても「お互いさま!!」と言い合えるような子育てができたらどんなに楽しい事でしょう。何しろ子どもにとってお友だちは自分とまだまだ一体化している時期です。たくさんのお友だちとの付き合いを通し、お友だちの素敵なところを自分の中に取り込む大切な時期でもあるのです。

 地域社会が大きく変わり昔のように隣近所の付き合いもない都会生活の中で、親世代が自身の親兄弟を頼ろうとしなければ子育ての孤立化は子ども自身の社会性の育成を阻むものになりかねません。子どもが仲良くしているお友だちを家に招き、時には自分の子どもも預かって貰える関係づくりは、小学校入学前から是非習慣化して欲しいと思います。子どもが小学校入学する程大きく成長したとはいえ、小学校の低学年の間は特に夜などの留守番は子どもにとって大変負担が大きく、我慢が強いられるものです。「今晩預かってもらえる?」そんな風に気楽に頼める関係があれば、子どもは本当に楽しく、一人ぼっちで留守番をするのとは雲泥の差です。生活の変化に応じて幼児期の思い出が本当に楽しいもので彩られるよう、大人同士もっともっと他人に頼れる關係づくりを考えて欲しいと思います。

 「子育てコラム」は、この回にて一応終了とさせて頂きます。