楽しく子育て⑩赤ちゃんと絵本で、赤ちゃんの玩具としての絵本について書きました。歩行開始の前に、だんだんと手が自由に使えるようになった赤ちゃんは、絵本でさえ、なめたりページをめくったりしてまるで玩具のように遊びます。そして歩き始めて、赤ちゃん自身の生活体験がグーンと広がると、絵本の中に、散歩のときに見た車や会ったことのある犬等を見つけ、嬉しかったことを思い出すのでしょう。そこで改めて、お父さんやお母さんに絵本を読んでもらうことをせがみます。

生活体験が広がれば広がるほど、絵本への興味も広がり、その中でも特にお気に入りの絵本に出会うと、「よんで!!よんで!!」と絵本を持ってきて何度もせがむようになります。家事の途中でついつい「後でね」とか「今はだめ」と、赤ちゃんの希望になかなか添ってあげられず、絵本よみのタイミングを合わせるのはなかなか難しいことでしょう。そして何とか読み終えると「もう1回・もう1回」とせがむので、「同じ本ばかりよんでもらいたがるので・・・」と困っておられるお母さんも居ますが、赤ちゃんにはとても興味深いことなので、出来るだけ赤ちゃんの要求に応えてあげてください。見た事のある対象への興味と同時に、自分に向かって絵本を読んでくれるお母さんお父さんの声にうっとりしているのでしょう、赤ちゃんは絵本と読んでくれる大人の顔と絵本を交互に見比べつつ声を聴いています。

保育園の0歳児クラスでは、殆どのお友だちのお昼寝時間が一定になってくると、絵本よみの時間も決まった時間に組み入れられるようになってきます。赤ちゃんより少し大きいクラスのお友達もお昼寝前に絵本読みをしてもらいますが、段々とその絵本読みの時間を楽しみに待てるようになります。特に絵本の大好きなお友達は、昼食後すすんで自分からパジャマに着替えて、絵本読みの始まるのを定位置に座って待っています。その姿は何とも可愛らしく、「子ども達の絵本好き」をつくづくと感じています。日々の生活の中に絵本読みの習慣が組み込まれてくると、絵本を読んでもらうということが特別なことではなくなり、どの子どもも当たり前に絵本読みに参加します。午前中の活動で充分に生理的欲求が満たされた子どもたちは、今度は絵本が情緒的・知的欲求を満たしてくれることにさらに大きな満足感を得るのでしょう。絵本によって実際に見たことのある車や動物を思い出し、それを見た時の嬉しさも同時に思い出します。こうして絵本を通して自分の目の前にない物を心の中に描き出す訓練をして、子ども達の想像力が徐々に育って行きます。

子ども達にとって絵本とは、小学校低学年頃になるまでは大人に読んでもらうものです。想像力の世界に遊ぶ力、ひいては見えないものを考える力は、こうした大人の助け無しには育たないので、絵本読みは親の大切な仕事の一つだと言えるでしょう。しかし絵本を読んであげるときには、くれぐれもお子さんに“教えよう”としないで欲しいと思います。あくまでもお子さんが興味を示したものについてのみ声に出してあげて下さい。他の絵の方を指差し「これは○○よ」と教えようとすることは、子どもの自身の想像している“おもい”を邪魔することになってしまいます。また、絵本を読んであげることによって子ども自身が何を感じたか、どんな感想を持ったかなどをしつこく聞き出すことは、これから先ずっとタブーであることを、私たち大人は心しておかねばなりません。たくさんの絵本を読んでもらい子どもが心豊かに育つためには、絵本読みの時間に叱られたり、何かを教えこまれることだけはあってはなりません。大人は子どもの想像の世界の重要な「案内人」ですが、それについて教える事はできないのです。

親にとって子どもの想像力を育てる営みとしての絵本読みは、赤ちゃん時代からはじまりますが、0歳児時代に理解できる絵本は、赤ちゃんの知っている簡単なもの(車・食べ物)を扱う、絵のみでストーリー性も少ないものばかりなので、大人にとって決して面白いと思えるものではないかもしれません。1歳過ぎの赤ちゃん達に絵本を無理やり読まなければいけないと思い込まず、絵本が子ども達にとって玩具位に見守っておくことが必要かと思います。あまり堅苦しく考えないで赤ちゃんの遊び心を優先させながら、この時期から徐々にゆっくり楽しめる時間としての「絵本読みタイム」を決めていくと、生活のリズムが作りやすくなっていきます。そのことで大人と子どもがゆっくり向き合える時間の習慣ができますし、子どもはそれを楽しみに待つようになっていきます。

長いけれど必ず通り過ぎてしまうこれからのお子さんの成長の段階で、絵本読みの時間ほど、大人と子どもの心がしっかりと向き合える時間は、他にそうはないように思えます。お子さんの成長と共に、段々と大人にとっても興味深い絵本に出会えるようになってきて、大人でも心引かれる美しい絵と思わず涙がこぼれてしまうような感動があることが、絵本読みの魅力です。絵本読みを通して大人も楽しめるようになるまでは、しばらく辛抱強くお子さんの「よんで・よんで」につきあってあげて下さいね。絵本の魅力は、想像の世界に遊ぶ一時を、こうして大人と子どもで共有することではないでしょうか。子どもの信頼する大人が、自らの声と存在で想像の世界を紡ぎ出すことで、子どもは安心して想像の世界に浸ることができます。子どもをのびのびと想像の世界に遊ばせてあげる事を心がけながら、長いようで短い「魔法の時間」を、どうか一緒に楽しんでほしいと思います。